NHKで放映されていた「主婦カツ!」をご存じでしょうか?
子育てに一段落ついたアラフィフ専業主婦が20年ぶりの仕事に奮闘する姿を描いたドラマです。

パワフルな主人公が順調に社会復帰をしていく姿は、少々出来過ぎかな、、とは思いますが、共感するところもあると相槌を打ちながら楽しく見ていました。

今回は、プレ定年夫婦の老後を左右すると言っても過言ではない退職金制度についてお話しします。

退職金は企業人にとっては、人生の中で受け取る大きなお金の一つと言えます。しかしながら、退職金制度の内容や受け取る金額については知らない人が多いようです。

退職金制度を知り、自分の場合はどうなのか?考えてみたいと思います。

退職金について把握しておこう

退職金をテーマにした理由は、私のクライアント様の中で退職金について把握している方がむしろ少数だと感じ危機感を抱いているからです。

中には、そもそも退職金があるかどうかわからない、退職金って会社員なら誰でももらえるでしょ?という方もいらっしゃいます。

実は、退職金を会社が支払う義務はありません。

厚生労働省の平成30年就労条件総合調査によると、退職給付(一時金・年金)のある企業の割合を企業規模・業種別でみることができます。

表:企業規模による退職金制度がある割合

企業規模退職給付(一時金・年金) 制度がある企業
1,000人以上92.3%
300〜999人91.8%
100〜299人84.9%
30 〜 99人77.6%
資料:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

従業員が300人以上の企業規模の場合、9割以上の企業に退職金制度がありますが、100人未満になると8割を下回っています。

中小企業の定義は、卸売業・サービス業・小売業以外の業種では従業員300人以下、卸売業とサービス業では100人以下、小売業では50人以下です。

夫が中小企業で働いている場合、まずは退職金制度があるのか確認しておく必要があります。

退職金の支給方法は一時金と年金になる

退職金と聞くと、一括で受け取ることができると思いがちですが、支給は一時金、年金、併用の3パターンがあります。

退職金制度がある場合、従業員が1,000人以上の会社は一時金と年金の併用がほぼ5割ですが、1,000人未満の会社では一時金のみが多いことがわかります。

表:退職給付制度の形態(退職給付制度のある企業にて)

企業規模退職一時金制度のみ退職年金制度のみ両制度を併用
1,000人以上27.6%24.8%47.6%
300〜999人44.4%18.1%37.5%
100〜299人63.4%12.5%24.1%
30 〜 99人82.1%5.4%12.5%
資料:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

100人未満の企業規模では8割以上の企業が退職一時金制度のみとなっています。

宿泊・飲食サービス業で働く場合、退職金があるか確認しておこう

また、業種別に高低差があることが分かります。退職金制度がある形態別企業割合を上位から並べてみました。

表:退職金給付制度の形態別企業割合

業種退職金制度がある割合業種退職金制度がある割合
複合サービス事業96.1%教育・学習支援業86.5%
鉱業・採石業・砂利採取業92.3%情報通信業86.1%
電気・ガス・熱供給・水道業92.2%不動産業・物品賃貸業81.5%
金融業・保険業88.6%卸売業・小売業78.1%
製造業88.4%運輸業・郵便業71.3%
建設業87.5%サービス業(他に分類されないもの)68.6%
医療・福祉87.3%生活関連サービス業・娯楽業65.3%
学術研究・専門/技術サービス業86.8%宿泊業・飲食サービス業59.7%

退職金制度があるか分からない場合には、とりあえず会社の規模と形態を参考にしてみてください。

退職金があるか確認する方法は?

自分の会社に退職金があるか知らない、と言う人はあまりいないかもしれませんが、「よくわからない」場合には、会社の就業規則や退職金規定の確認をしておきましょう。確認したけどよく分からない時には人事部や総務部など担当部署に確認をします。

その際、以下の3つを確認しておけば十分です。

  • 退職金制度があるのか
  • 退職金制度の内容(一時金、年金など)
  • 試算したい場合、どこを参照すればいいのか

最近では、会社内のイントラネットなどで就業規則や退職金規定など確認できる場合もあります。夫婦で一緒に確認してコミュニケーションを取るのもオススメです。

退職金の額を試算する方法

退職金制度がある場合、いくらもらえるのか知りたいところです。
例えば、会社の退職金規定では、次のように記載されています。

ケース1:退職一時金制度の場合

支給する退職金は、退職時における基本給の月額と、別に定める支給係数表で該当する支給率を乗じて算出した金額とする。

自己都合による退職の場合は、○○%を乗じた金額とする。退職金は原則として退職の日から○○日以内に全額支給とする。

支給係数は、5年=3.0、10年=8.0、30年=40.85など勤続年数と縦横で確認できる表形式になっているので試算すると大体の目安が分かります。

ケース2:年金制度の場合

退職金の支給は退職年金とする。

年金の支給は、偶数月の1日(2月、4月、6月、8月、10月、12月)、給付期間は以下から選択することとする。

年金の計算式は、年金受給開始時の仮想個人勘定残高÷定年金現価率となります。

表:確定年金現価率

給付期間年金原価率
20年有期年金16.4872
15年有期年金12.9559
10年有期年金9.0572
5年有期年金4.7526

このように退職金規定に計算方法が記載されているので、目安の金額を試算することができます。

退職金が確定拠出年金(企業型DC、401K)の場合

退職金が確定拠出年金の場合には、自分で運用商品を選択しているので自覚していることでしょう。年1回、確定拠出年金の運用報告書が自宅に郵送されてきますので受取見込額については利回りを確認して予想できます。

なお、インターネットから利用登録をすることでパソコンから運用状況を確認したり、運用商品の変更などを行ったりできるので登録しておきましょう。

退職金の平均額は?

最後になりますが、定年退職時にもらえる退職金の平均額を厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」から見てみましょう。

大学卒(管理・事務・技術職)の場合

勤続年数退職一時金制度のみ退職年金制度のみ両制度併用
20~24年1,058万円898万円1,743万円
25~29年1,106万円1,458万円1,854万円
30~34年1,658万円1,662万円2,081万円
35年以上1,897万円1,947万円2,493万円

高校卒(管理・事務・技術職)の場合

勤続年数退職一時金制度のみ退職年金制度のみ両制度併用
20~24年462万円487万円1,239万円
25~29年618万円878万円1,277万円
30~34年850万円832万円1,231万円
35年以上1,497万円1,901万円2,474万円

高校卒(現業職)の場合

勤続年数退職一時金制度のみ退職年金制度のみ両制度併用
20~24年390万円435万円548万円
25~29年527万円723万円746万円
30~34年645万円794万円1,157万円
35年以上1,080万円1,524万円1,962万円

各表は厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」より作成しました。

やはり勤続年数が長くなるほど退職金の額は大きくなることがわかりますね。

ところで、退職金は夫婦の協力により築きあげた財産と言えます。というのも退職金支給後に離婚した場合、夫の退職金は財産分与の対象になるとされているからです。

1,000万円以上の大きなお金を受け取る可能性がある退職金ですから、どうなっているのかわからない、ではなくしっかりと確認して試算しておくことが老後の暮らしを左右することにもなります。ぜひ夫婦で話し合っておきましょう。