我が家はサラリーマン家庭ですが、夫の会社では401K=企業型DC(※)を導入しています。
401K(※)とは?
別名、企業型確定拠出年金(企業型DC)のことをいう。
毎回の拠出額(掛金)があらかじめ確定する一方、将来の給付額は運用の結果によって決定する。平成13年10月からスタートした新しい年金制度「確定拠出年金」のことをいう。
米国に内国歳入法401条(k)項に基づく同様の制度があり、日本はそれを参考にしたため「日本版401k」と呼ばれている
企業型確定拠出年金制度を導入する通知がきた
ある時、夫の勤務先からお知らせがきました。
確定拠出年金・退職金前払い制度選択申請について
2015年●●月からの年金制度改訂に向けて
企業年金60歳未満の加入者の方全員が、会社拠出金についての申請が
必要です。申請内容と申請方法等は、以下の通りです。
内容 : 毎月の会社拠出金に対して、
確定拠出金にて運用する比率・退職金前払い金
として給与受給する比率を本人が申請例: 会社拠出金 50,000円 とした場合
例 1) 申請 確定拠出年金100%
(50,000円を 確定拠出年金で運用)
年金前払い手当 0% (給与で受給なし))例 2) 申請 確定拠出年金 30%
(15,000円を 確定拠出年金で運用)
年金前払い手当70%(35,000円を給与で受給)例 3) 申請 確定拠出年金 0%
( 0円 確定拠出年金 )
年金前払い手当100%(50,000円を給与で受給)
なんだかわかりにくいお知らせですよね。確定拠出年金の制度自体を知らないと何を言っているのかわからないかもしれません。とても大事なお知らせですから、詳しく見ていきましょう。
企業型確定拠出年金には2つのパターンがある
実は企業型確定拠出年金には、選択制とマッチング拠出と言われる2つのパターンがあります。両方のパターンを導入している企業もあります。
パターン1:選択制の確定拠出年金
掛金について、全額を会社が拠出(負担)をします。選択制とは、つまり、確定拠出年金の掛金とするのか?あるいは、毎月の給与に上乗せして退職金の前払い(年金前払い手当)として受け取るのか?これら2つの選択権を社員が持つことから「選択制」と呼ばれているのです。
パターン2:マッチング拠出
マッチング拠出は、会社が拠出する掛金に上乗せして、社員自らが掛金を負担(拠出)することを言います。具体的には、受け取った給与から掛金を積み立てることになります。給与天引きで掛金が引かれるとイメージしておきましょう。
選択制の企業型確定拠出年金のケース
今回、我が家が利用することになった制度は、選択制と呼ばれる企業型確定拠出年金になります。
例えば、毎月50,000円を、会社が社員に年金原資として支給することになったため、支給方法については次の選択肢から選びましょうということです。
1)確定拠出年金100% 年金前払い手当0%
50,000円全額を確定拠出年金として積立運用
2)確定拠出年金30% 年金前払い手当70%
15,000円を確定拠出年金として積立運用、35,000円を給与で受け取る
3)確定拠出年金0% 年金前払い手当100%
50,000円全額を給与で受け取る
何を判断基準にして、上記3択から選ぶのがいいのか?考えてみたいと思います。
確定拠出年金として拠出するメリット
確定拠出年金として拠出する=自分で運用商品を選んで運用することになります。運用するお金には税金や社会保険料が一切かからないという優遇ルールがあり、最大のメリットです。というのも確定拠出年金は国が定めた私的年金制度であり、推奨されている側面があるためです。
一切かからないとはどのくらいの金額なのか、気になるところですよね。ただし、各自の年収により所得税率は異なるので自分の所得税率を確認する必要があります。ちなみに年収600万円で目安は10%です。日本は累進課税制度であり、5%〜45%まで7段階の所得税率が定められています。また、住民税率はほぼ10%と覚えておきましょう。健康保険・厚生年金などの社会保険料は給与の15%が目安となります。
例えば、毎月5万円で年間60万円を拠出した場合、年収600万円であれば所得税・住民税で合わせて12万円(60万円x20%)の税金が軽減されます。というのも、確定拠出年金の掛金は所得控除され、課税対象とならないためです。また、運用で出る利益(運用益)についても非課税です。通常は20.315%の課税があります。
社会保険料については年間9万円が軽減されることになります。ただし、社会保険料負担が減ることはメリットだけではなく、後ほどお伝えします。
確定拠出年金として拠出するデメリット
一方のデメリットとして考えておくこともあります。まずは60歳まで引き出すことができない制限があることです。
次に、年金前払い手当と比べると、その分毎月の給与額が少なくなるため、厚生年金や健康保険の保険料を決める「標準報酬月額」の等級が低くなります。具体的には、将来受け取る老齢厚生年金や健康保険の傷病手当金・出産手当金、雇用保険の基本手当(失業保険)・育児休業給付や介護休業給付にまでマイナスの影響が及びます。つまり、確定拠出年金の掛金にすることで社会保障の受給額が減ってしまうという負の部分についても理解しておく必要があります。老齢厚生年金以外の社会保障給付については必ず受給するものではなく、ある意味保険であることを付け加えておきます。
補足になりますが、上記のデメリットを受けない人もいます。「標準報酬月額」の等級には上限があるからです。厚生年金は31級(報酬月額60万5,000円から63万5,000円)、32等級(報酬月額63万5,000円以上、※2020年9月〜変更となりました)健康保険は50級(報酬月額135万5,000円以上)と決められています。例えば、確定拠出年金の掛金を引いて、年収が762万円(63.5万円x12ヶ月)以上であれば老齢厚生年金の受給額にマイナスの影響はありません。
年金前払い手当として受け取るメリット
毎月の給与として受け取る場合、自由にそのお金を使うことができます。生活費に入れることもできますが、年金前払い手当なので老後資金として貯蓄か運用をしておきたいものです。
また、確定拠出年金として拠出しないので、毎月の給与額は多くなりますから、社会保障の給付額についてもマイナスの影響が出ることはありません。ただし、年金前払い手当を受ける以前に年収726万円(60.5万円x12ヶ月)以上ある場合には、老齢厚生年金を増やすというプラス効果はありません。
年金前払い手当として受け取るデメリット
給与で受け取ることになるため、税金と社会保険料が引かれることになります。例えば、手当として5万円を給与で受け取り、個人的に投資信託などで運用する場合、所得税・住民税が課税されて健康保険料・厚生年金保険料が引かれるため運用できる正味のお金は5万円ではありません。例えば、年収600万円であれば2万7,500円が毎月投資できる金額です。そして、投資で利益が出た場合には、運用益に課税されますので、ダブル課税となるのです。
まとめ それぞれのメリット・デメリットを理解しておくこと
以上、それぞれのメリット・デメリットについてお伝えをしました。確定拠出年金は老後資金を貯めるためのメリットの大きい制度です。
特に年収が高い場合は、1)確定拠出年金100% 年金前払い手当0%を選択しておきたいところです。理由は、社会保障へのマイナス影響がほぼないからです。
親の介護で介護休業給付を申請する可能性が高い場合には、目減りする介護給付額と税制優遇額を比較して割合を決めるのもアリです。また、給付を受ける可能性がある年だけは給与前払い手当の割合を多くしておくのも対策の一つになります。
60歳まで引き出すことができないのであれば、とりあえず給与でもらっておこうと考えるかもしれません。その場合も夫婦でよく話し合っておくことをオススメします。
また、1度でも確定拠出年金の拠出を選択した場合には、その後に拠出ゼロへの変更はできない、などルールがありますのでその点もしっかりと確認をしておきましょう。
それぞれのメリット・デメリットを考えた上で賢い選択をしたいものですね。